現在ドイツでそろばんの先生という一応先生の端くれをやっているわけですが、最近とくに思う「先生」という職業に関して思うところを書いてみようと思います。
ちなみにそろばんの先生になったきっかけはこちらの記事に書いてあります。
前職で知った日本の先生働きすぎ問題
別の記事でも書いていますが、前職で留学カウンセラーやコーディネーターをしていました。
それと同時に日本の小学校中学校に留学や英語のICT教材を営業もしていました。
そこでよく感じるのが「日本の先生働きすぎ!」ということ。
とくに印象的だったエピソードをご紹介します。
突如連絡の取れなくなる担当の先生
わたしの場合は英語科の先生と連絡を取り合い、「どうやって英語教材を導入するか?」「どんな留学にしたいか?」
ということをやり取りしていました。
とくに地方の学校で働く先生の場合は基本はメールか電話となります。
一応営業マンなので、何とか契約に繋げたい!と思い一生懸命メールや電話をしているのですが
ある日突然パタッと連絡が来なくなります。
「テスト期間中で忙しいのかな?」とか「これは契約に繋がらないかな?」とか考えつつ、でも念の為再度連絡を入れると
数日後に「英語科の◯◯(先生の名前)は只今体調を崩し休職しています」
という返信が。
もちろん交通事故だったり、何か色々な理由があるかもしれませんが、他の先生の話を聞くと精神的な病気で休職していることも多いそう。
Gerd AltmannによるPixabayからの画像
なかなか一般企業向けに営業をしていた頃にいきなりの休職で連絡が取れなくなることは多くはないのですが
学校の先生の休職する確率の高さたるや!
とくにわざわざ留学やICT教材の導入を検討するほどのやる気のある先生ほど、途中で心がぽっきり折れることがあるようです。
年休6日の教頭先生
皆さん年間何日お休みありますか?
普通に一般企業で働いていれば土日に休み、祝日、そして有給も年間約20日程度休めますよね。
(有給消化できない、っていうのはまた別の問題だけど)
「きっと下っ端の先生なんでしょ!?」って思うかもしれませんが、役職関係ないようです。
当時のお客さんで中高一貫校のそこそこの進学校の教頭先生と話していたところ驚愕の一言が。
「ぼくは去年の1年間で6日間しか休まなかったよ。」と。
年休6日なんて、一般企業で言うと超が着くほどのブラック企業です。
たしかに部活が忙しくて休みも取れないって聞いたことあるけど・・・
まさかここまでとは。
それにしてももう少し休んだほうが良いんじゃないか・・・笑
ヨーロッパの先生とも労働時間を比較してみる
2018年にOECDが世界48カ国の小中学校の先生を調査し、日本の先生の労働時間が他の国と比べるとぶっちぎりに長いことが判明。
国 | 中学校教員の労働時間(1週間あたり) |
1位 日本 | 56時間 |
2位 カザフスタン | 48,8時間 |
3位 カナダ
(アルバータ) |
47時間 |
OECD平均 | 38.3時間 |
最下位 ジョージア | 23.5時間 |
平均値と比べると1週間あたり約18時間の差。
つまり日本の先生は世界中の先生より1日3時間以上も長く働いているということ。
しかし!
同調査によると純粋に授業をしている時間は日本は18時間、OECDの平均20.3時間より短い・・・
週に56時間働いているのに教えている時間が18時間ということは勤務時間のうち授業はわずか3割。
7割は事務作業やその他の対応に追われている日本の先生。
なにがそんなに忙しいのか私なりに考えてみました。
忙しい理由1:部活動
これは先述した教頭先生のパターンですが、とにかく部活動の引率で土日が出勤を強いられているそう。
もちろん好きでやっている人もいますが、必ずしもそうとは限らないですよね。
実際にわたしが中学の頃に入っていた水泳部にも水泳全然得意ではない家庭科の先生が副顧問として入り
週末の大会の度に引率してもらっていました。
いま考えると、その先生が来ていた理由は謎。
先生も興味のない水泳の大会に行き(もしかしたら少しはあったのかも)、生徒も別に親しくもない先生に指導されるというダレトク状態。
そもそも部活動って当たり前になっているけど、本当に必要なのかそこから考える必要がありそう。
忙しい理由2:ICT化が進んでいない
OECDの調査にもあった56時間の勤務時間のうち授業時間を除いた38時間を先生達が何に使っているかというと
授業の準備や会議、あとは丸付けや生徒・保護者対応が大半を締めているようです。
しかし、生徒対応や保護者対応はしょうがないにせよ、授業の準備や丸付けのようなロボットでもできるような仕事に関しては、もっと効率的にやれば実は時間短縮ができるのではないかと思います。
わたしはIT系のベンチャーで働いていたので、比較的インターネットやテクノロジーに関しては
同世代で働いている人より詳しいとは想いますが
その状態で日本の学校へ営業に行くとまず驚くことが、先生達がかなりアナログな環境で働いていること。
一番驚いたのは、千葉の学校ではいまだにイチタロウスマイルを使っていると聞いたことでした笑
イチタロウスマイルって言うと、マイクロソフトオフィスのエクセルやワードより前に流行った日本発の事務作業用のサービス。
わたしが小学生のときにコンピューター室で少し使った記憶はあるけど、まだ存在していたとは・・・
(別にサービス自体をディスっているわけではないです笑)
いまはGoogleをはじめ無料かつ効率的に使えるサービスがたくさんあるのに、まさに井の中の蛙状態。
あとはコピー機一つにとっても、便利な機能を知ろうともせず
100枚の用紙のスキャンを1枚1枚スキャンしようとしていたり(手差し機能で1分以下で通常は済みます)
連絡帳に1つ1つコメントしたり(音声入力すれば歩きながらでも作業できる)
とにかく無駄が多い!
そして先日、4月から日本で先生になる大学生達に話しましたが、私より年下でも全くテクノロジーを使いこなしていない。
せっかく大学で教員免許取ったならそういったITの授業もあれば良いのにな〜って思ったのもつい最近の話です。
先生が幸せじゃないと良い教育は提供できない
ドイツに来てそろばんの先生になってよく考えるのは『先生が幸せじゃないと良い教育は提供できない』ということ。
先生だって人間。
睡眠不足やストレスが多ければ生徒に対しても怒りやすくなったり、余裕がなくなったりします。
私もつい夜更かししてしまい『少し眠いな〜』って状態で授業に入ると、普段は気にならないことが気になったり
ついキツイ言い方になったりと反省することもしばしば。
だからこそ、先生だって生徒と同じ時間に帰ってちゃんと休息を取ったり、家族との時間を大切にする方が
生徒との接し方が変わったり、よりクリエイティビティを発揮できるのではないかと思います。
テストの丸付けをしたり連絡帳にコメントを書くことより、よほど生徒にとっても良い影響がある。
ちなみに香港のドイツ系のインターナショナルスクールで働いていた友人に聞いたところによると
香港では先生の待遇がすごく良いらしく、給料も高く有給もたくさん取れるそうです。
そういうことをしっかり学校のトップが考えている、国として考えていることが
その学校、国の教育レベルを引き上げ、そして優秀な人材が育つのだと思います。
ということで最後に一言。
日本の先生、もっと休んでください!!
参考1:TALIS 2018 Results (Volume I)
参考2:日本の教員の勤務時間は世界一! 授業より事務仕事や課外活動で忙しいのは本末転倒では?
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