2023年8月に韓国へ5日間の教育視察ツアーへ行ってきました!
参加したのはSchool Voice Projectという学校の先生や生徒たち現場の声を拾い上げてより良い教育現場を作るために活動しているグループが企画したこちらです!
その第一弾として、今回はソウル市内にある体験型の性教育を学べる最先端な施設、Aha! Centerをご紹介します。
性教育の専門機関Aha! Centerって?
ソウルの中心地からほど近い場所に位置するAha!Centerは青少年向けの性教育を専門とした施設で
なんとソウル市から施設の委託を受け、運営されているそうです。
To create an equal and peaceful sexual culture
in which everyone is respected,
by empowering teens through gender sensitive education,
counseling and cultural experiences
ジェンダーを配慮した教育、カウンセリング、文化体験を通じて十代の若者たちをエンパワーし、誰もが尊重される平等で平和な性文化を創造すること
をミッションにかかげ、性に悩む10代の若者に対して様々なサービスを提供しています。
施設は地下1F〜3Fまであり、各フロアごとに様々なプログラムがあります。
(具体的なプログラムは後述します)
そして重要なことは、既存の性教育のようにただ身体の部位や、生殖機能に関して教えるのではなく
ジェンダーや性的アイデンティティ、セクシャリティなど包括的な性教育を目指しているそうです。
※ここでいうセクシャリティとは自分を起点にし、社会や他人との性という意味合いなんだそう
わたしが日本で受けてきた性教育とは全く違う、若者に寄り添い、さらに現代の問題にもしっかり対応した施設でした。
Aha! Centerができた背景や韓国の性教育事情に関して
Aha! Centerは元々ソウルのYMCA(キリスト教青年会)内で性に関する相談窓口として1984年からはじまりました。
※韓国は日本と比べるとキリスト教信者が多い
その当時から、なかなか相談しにくい性に関することを話に来る若者や、家庭内の性暴力を受けた若者のシェルターのような場所だったそうです。
そこから1999年にソウル市の委託を受け性教育センターとして再スタートしました。
ソウル市が性教育に関する政策を打ち出した時代背景
センター長さんも仰っていましたが、政府が政策を積極的に打ち出すのは、社会を揺るがす大きな惨事が起こった後なんだそう。
Aha!Centerができた1990年代の韓国を含むアジアはアジア金融危機により、国内の経済が低迷していました。
それにより職を失った若者(とくに女性)が性的搾取に合うことが多かったそうです。
そんな中1998年に仁川市の居酒屋で起こった火災事件、多くの10代の若者の命が奪われました。
その原因として若者たちの居場所がないことが問題視され、そこで性教育に関する施設を政府主導で作ることになったそうです。
- 1990年代の韓国では経済が低迷、それにより若者が性的搾取の対象に
- さらに仁川市の火災事故を経て、政府主導で性教育施設をつくることになった
- 元々YMCA内で性の相談窓口だったところに白羽の矢がたち、Aha!Centerが作られることに
Aha! Centerがどんな施設なのかご紹介!
前述した通りAha!Centerは5階建てのビルのうち、B1F(地下)〜3Fまでフロアごとに様々なプログラムを提供しています。
どんな施設なのか見てみましょう!
1F:ロビー
まずは来た人が落ち着ける場所。
ミラーボールがあったりと性教育のイメージとはかけ離れて、ポップな印象です。
1Fのトイレは男女の性別がわかれておらず、すべて個室。
LGBTQなど様々な人にとっても入りやすい雰囲気でした。
2F:14歳以上が対象
みんなの性に関する質問を集め、それをまとめたマップが置いてありました。
さらにそのマップを元にフロア全体で謎解きゲームのようになっています。
指定された場所にいき、そこにある質問に関してみんなでディスカッションします。
ここではともに学び合うということに重点を置いてあるそうです。
2F:8〜13歳が対象
このフロアでは、小学生向けに様々なプログラムがありました。
こちらは、バッグの中身と写真の職業をマッチさせるゲーム。
ジェンダーと職業に関して考えるプログラム。
「建築現場=男性」や「子育て=女性」
のような固定化してしまっているマインドセットを問い直すことが目的です。
お隣のお部屋では性に関して討論する場が設けられていました。
面白いところは、参加者はいろんな惑星からの代表者で、宇宙会議に参加しているという設定の上参加します。
「自分の惑星の場合は・・・」という前提で討論します。
討論するテーマは同じ世代の子たちの性や恋愛に関する相談。
その他このフロアでは、人形劇を通して家族間や友人間でのスキンシップや「いや」「やめて」などの意思表示に関して学んだり
ゲーム感覚で性器の名前を学ぶアクティビティが用意されていました。
B1F(地下):運動できるスペース
地下は少し広い部屋があり、運動を通してボディポジティブ(ありのままの自分の身体を好きになる)を学んだり
私が見学にいったときはちょうど思春期パーティーという、色々と心の変化のある思春期を楽しもう!
というイベントが開催されていました。
韓国と日本の性教育の違いや気付き
韓国は世界でもトップの美容整形が発展している国でもあり、その裏では容姿で評価が決まったりと行き過ぎたLookism(見た目重視の思想)が進んでいます。
しかし、ここ数年ではそれを見直しボディポジティブ(ありのままの自分の身体や容姿を好きになる)に力を入れようという流れもあるそうです。
これに関しては日本も韓国ほどではないとは言え、かなり近い状況にもあります。
しかし学校や家庭でそれを習う機会なんてありますか?
また日本では性教育自体が韓国と比べると本当にまだまだ進んでおらず、偏見や誤った認識から、性教育の専門家が少なかったり、それを正しく伝えることが難しいと聞いています。
それにより正しい知識をつけることができずに社会に出て、知らないうちに性被害にあったり、加害者になってしまう現状もあります。
手遅れにならないうちに、日本も韓国や欧米を見習って、もっとポジティブに性教育を見直すことが必要なのでは?と考えさせられた時間でした。
住所:200, Yeongsin-ro, Yeongdeungpo-gu, Seoul, Republic of Korea
※言語は基本韓国語、英語で紹介しているページもあります!
韓国教育ツアー②はソウル郊外にあるシュタイナー教育をベースにしたオルタナティブスクールの「コヤン自由学校」を紹介しています。
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