昨日から始まったオランダ教育研修ツアー、2日目の今日からは実際に現地の学校を訪問しました。
オルタナティブ教育では日本では少しマイナーかもしれませんが、今日はフレネ教育の学校。
今回はフレネ教育の紹介をしたいと思います。
ちなみに初日の記事はこちらから。
【初日】オランダ イエナプラン主催の教育ツアー参加!
そもそもフレネ教育って?
私もこの研修前は名前は聞いたことがあったものの、とくにどんな教育メソッドか詳しくは知りませんでした。
まずは知らない方のためにフレネ教育に関して触れておくと
フレネ教育とはフランスの教師であったセレスタン・フレネ(Celestin Freinet, 1896年10月16日 – 1966年10月8日)が自身の勤める公立学校で始めた教育である。現在では「現代学校運動」と呼ばれ発展を続け、スペイン、ドイツ、ブラジルなど世界38か国に広がっている。(Wikipedia「フレネ教育」より出典)
イエナやモンテッソーリとの違いは、学年ごとにわけていること。
(イエナプランでは年齢もミックスで授業を展開しています)
とくに大きな特徴と言うと、生徒の作文から抽出したテーマを教材にするということ。
最初どういう事?って思うと思いますが、例えば
クラスで自由作文を書きます。
ある生徒は「週末に家族で行ったスキー旅行に関して」書き、ある生徒は自分が大好きな「恐竜」に関して書いたとします。
クラスの生徒みんなで話し合い、では今回は「恐竜」をテーマにしよう!
と決め、先生はその「恐竜」に関連する単語をリストアップしみんなで学んだり
「恐竜」に関する歴史を学んだり、絵を描いたり・・・
日本のように国語、算数、理科、社会のような教科があるわけではなく
作文から抽出した「恐竜」というテーマに沿って様々な観点から学習する、ということがフレネ教育の根幹になっています。
もちろんテーマは先生が決めるのではなく、生徒達が話し合い投票で決めることも重要視されており
子どもはそこで話し合いや民主主義的なことを学ぶそうです。
ちなみに算数に関してはしっかりとして教科としてあるようですが、それもなるべくテーマに沿って授業を進めるようです。
(恐竜の人形を使って足し算を教える等)
大人が勝手に決めた教材ではなく、純粋に生徒が興味関心のある内容をテーマにするというのがフレネの考えだったようです。
なお生徒はかなりの頻度で作文を書く機会が多いため、他のオルタナティブ教育よりLiterature(読み書きや文学的な部分)が強いそうです。
そして今回訪問させて頂いたのがデン・ハーグから電車で20分ほどのデルフトにあるParkschool(パークスクール)と言う小学校になります。
なおデルフトはあのフェルメールが生まれた地。
「真珠の耳飾り」や女性がミルクを注いだ絵は皆さん見たことあるはず。
生徒の98%が移民や難民の子どもの「Parkschool」
2日目の今日はお昼にデン・ハーグ駅で集合し、みんなで電車で20分ほど移動、そしてデルフトに到着しました。
天気予報では曇りか雨となっていましたが、なんと快晴!
日頃の行いが良かったようです。
駅から更に歩くこと15分、何ともおしゃれな建物が。そう、ここが学校になります。
複合施設型学校!?
Parkschoolに到着してまず驚くのが、校舎が教育関連の複合施設のようになっているということ。
日本で複合施設と言うと大型ショッピングモールや地元の公民館のようなものをイメージしますが、ここはなんと学校や幼稚園の複合施設になっています。
よって、このParkschoolの入っているこの建物には実はもう1校全く別の小学校が入っています!
教室は別れているけど、図書館や体育館、グラウンドはシェアしているそうです。
更に2校の小学校に加え、Preschool(幼稚園のような所)が入っていたり授業がない時間は体育館を一般の方向けのスポーツクラブやヨガ教室などに開放しています。
オランダでは全ての学校が国(地方自治体だったかな?)の所有になっており、教室の机やロッカー教材等もすべて国の持ち物になっています。
そのため予算の関係やスペースのことを考慮し、学校やその施設もシェアするということが割と一般的のようです。
日本ではなかなか見ない光景ですね。
そしてタイトルにもありましたが、「Parkschool」はフレネ教育のスタイルを取りながら移民や難民の子ども向けにの学校であり
150人の生徒のうち純粋なオランダ人は3人程度でその他147人は北アフリカ(モロッコやアルジェリア)からの生徒や内戦から逃れてきたシリアからの難民になります。
移民や難民に立ちはだかる「言葉」の壁
「Parkschool」が他のフレネ教育の学校と違うこととして、「オランダ語」のサポートがしっかりとあるということ。
通常のフレネ教育の学校ではまだ読み書きがままならない低学年は除き、3~4年生になれば作文を書くことはそんなに難しくないですよね。
しかし「Parkschool」では1年生から入ってくる生徒もいれば4年生から入ってくる生徒、6年生から入ってくる生徒も様々。
自分の生まれた国とは言葉も文化も全く違う国に移住し、いきなり作文を書けと言われてもそもそもオランダ語話せない生徒がほとんど。
そういう生徒のためにオランダ語の授業、更サポートが必要な生徒には先生が授業とは別にオランダ語を教えることもあるそうです。
さらに、言葉がわからない生徒のために先生が指示したい時は、教室にイラストを指差して「次はこれをするよ〜」と理解できるようなしくみがたくさんありました。
このように最初はオランダ語がわからずに勉強についていけない子どもも、語学学習も同時に続けていくことで
いきなり成績が上がったり、他の生徒とコミュニケーションを取れることで学ぶことの楽しさを感じることができるようになるそうです。
学校にルール(校則)は必要!?不必要!?
そして次に「Parkschool」の特徴として挙げられるのが「学校にルール(校則)がある」ということ。
日本人からしたら「それが何か?」と思うかもしれませんが
オランダでは日本のような「髪を染めてはいけない」とか「制服を着る」というような校則は基本的にはありません。
なぜかと言うと、オランダでは「自由と自己責任」ということをすごく重要視しているから。
例えばオランダではマリファナが合法とされている世界でも数少ない国。
もちろん色々な背景や意見もあると思いますが私が考えるに、マリファナには「アルコールやタバコと比べたら身体の害が少ない」「リラックス効果がある」というプラス面もあれば「依存すると人生を棒に振る可能性がある」というマイナス面もあります。
日本のようにマイナス面だけを見てとにかく禁止!とするのではなく
「良い面も悪い面も両方あるね、選択するのは自由だけど、自己責任でね」
というスタンスが多いようです。
(もちろん日本ではマリファナは違法ですし、オランダ人も賛否両論のようなのであくまで一例ですが)
よって学校でも「ピアスはだめ」「髪も染めちゃだめ」「アルバイトはだめ」みたいな何でもNo Noな日本とは違い
生徒には良い面も悪い面も伝えた上で選択する自由を与えます。もちろん自己責任ということも伝えて。
そして万が一何かトラブルが起きても当事者以外にも平等に全てをシェアし「何がダメだったのか?」をみんなで話し合うそうです。
これはかなり理にかなっていると思うし、日本もぜひ取り入れるべきだと私は思います。
とまあ話は少し逸れましたが、校則のないオランダなのに「Parkschool」にはある。
それはなぜか?
察しの良い方はお気づきかもしれませんが、移民や難民の子どもには日本人が当たり前で持っている「マナー」や「道徳心」を学ばずオランダに来てしまった子が多いから。
例えば「人を傷つけてはいけません」や「みんなで強力しましょう」とか「人のものを盗んではいけません」
とか日本人であれば家庭で親が教えたり、幼稚園や学校で学びます。
しかし内戦により学校に通うことができなかった子どもは、「どうやって生き抜くか」がまず重要でそんなことを教えてもらわずに成長することもあります。
そういった子どものためにも「Parkschool」では精神科医と強力して一緒に6つの行動規範を作ったそうです。
そして私がさすが、と思ったのはその6つの行動規範を毎日生徒と見直し、
「今日1日、一番他の友達と一緒に強力できた人はだれでしょう?」と
できた子をみんなで決めるそうです。
日本のように規則を破った生徒を罰するのではなく
行動規範に沿った良い行いをした人を評価します。
もちろん間違った行いをした生徒には注意したり、一定時間教室の外で待たせる等の罰もあるのでバランスは取っている印象でした。
考察:エクスクルーシブからインクルーシブを目指すオランダの教育
やはり移民・難民問題はオランダやドイツでは直面している問題。
日本と大きく違うのはエクスクルーシブ(マイノリティのためにどのような学校を作るか)からインクルーシブ(マイノリティをどのようにマジョリティと共生させるか)を目指している点。
これは移民や難民に限らず障害を持った子どもをどのように教室に戻すか、ということをオランダは注力しているそうです。
日本はやはり障害があったら特別学級のほうがお互い良いでしょう、という前提ですが
オランダは障害があってもなくても一緒に学ぶほうがお互いのメリットになるという前提で学校を作っているそうです。
もちろん今回訪問した学校の先生が言うにはやはり生まれ育った環境や文化宗教もオランダとは違うこども達、普通の学校ではうまくいく部分もなかなかうまく行かないことも多いそう。
それでも移民問題に対して教育という側面で必死に向き合おうとしている先生方はすごくかっこいい。
今日会った子どもたちは日本やドイツで見るこどもと同じように授業を受けているし、普通に楽しそうにはしているけど
中には内戦で家族を亡くした子どもだってたくさんいるそうです。
これからサステナブルが教育を目指すのであればエクスクルーシブからインクルーシブな学校を目指すべきだということを改めて感じました。
日本も今後は移民の受け入れをどんどんしていくということでこれに関しては改めて考えてみる必要がありそうですね。
(日本は難民の受け入れというより、ただの労働力として見ているようですが・・・)
そしてフレネ教育に関しては、先生の力量次第で良くもあるし中途半端になるのではないかなという印象でした。
慣れていない先生だとテーマを決める所までは簡単でも、そこから学ばなければいけない要素を持ってきて教材を用意するのは中々大変そう。
オランダ人の働き方に関してはまた別の記事で書きますが、実際に「Parkschool」の先生もフルタイムが多かったり、通常より長く8時〜5時半くらいまで仕事をしていたりするそうです。
(5時半とか日本人からしたら羨ましいですが)
また先生やクラスによって生徒の習熟度や卒業時の学習差が大きいのでは?と思う部分もあるので
その辺りのギャップをどうしているのかは、引き続き調べて行けると良いなと思いました。
明日はモンテッソーリ教育の学校を訪問します!
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